■1 9月7日に仙台地方裁判所第2民事部により出された、国の責任を否定した薬害C型肝炎訴訟に対する不当判決に対し、本日原告6名全員、仙台高等裁判所に控訴状を提出した。
■2 平成14年~15年にかけて、全国5地裁で提訴された薬害肝炎訴訟は、全国の薬害被害で苦しむ肝炎患者の早期救済を目的とし、一つの原告団・弁護団として、国及び製薬企業に対する責任を、共通の主張及び立証を持って、闘ってきた。
■3 すでに7月31日までには他の4地裁の判決が出そろい、いずれの判決も少なくともフィブリノゲン製剤については、時期の違いはあるものの、国及び製薬企業に対して、本件薬害発生・および薬害拡大の法的責任を認め、当時の国の薬事行政の杜撰さを断罪するものであった。
■4 ところが、仙台判決は、仙台を初めとする全国の原告・弁護団はもとより、多くの国民、医療関係者、マスコミが予想もしなかった内容の、国の責任を否定し、また企業の責任を極力限定するものであった。
なお、この様な結論は、国及び企業においても予想しておらず、判決直後のコメントにも困惑が見られるほどであった。
■5 この様な結論を導いた仙台判決・仙台地方裁判所第2民事部の問題点は次のとおりである。
(1) 戦後社会問題となり、また司法の場で長い時間をかけて責任と真相が究明されてきた、スモン・クロロキン・HIV等、薬害大国として多くの国民的被害をもたらしてきた、薬害の発生の歴史と実態について、余りに無関心・無知であり、裁判体(畑中芳子・中丸隆・松本英男)に対しては法曹人以前に、人としての良識を疑わせるものがある。
(2) 国の責任は認めたくない・出来れば企業の責任も認めたくない、という結論先にありき、という姿勢が露骨であり、薬害を垂れ流してきた旧来の薬事行政に携わってきた官僚の代理人とも言うべきスタンスによって立っている。
(3) クロロキン最高裁判所判例の理論に則っているかに見えて、前述の浅薄かつ意図的思考のもと、似て非なる、犯罪的結論をが導き出しているものである。
(4) 犯罪的結論と評価したのは、判決が「原告が主張するような立場を前提とすれば、当該医薬品の持つ有効性が過小評価される一方で、その危険性が過大評価される結果、本来当該医薬品によって保持され得る国民の生命、健康がその使用が認められないために失われるといった不合理な結果を招くことにもなりかねない」として、医薬品には危険が付き物であり、多少の被害発生はしょうがないのだ、という危険性を軽視した薬害被害容認の姿勢をとっていることである。
他地裁が安全性への配慮を重視して予見義務を論じていることと大きく乖離しているところである。
(5) また、更に見逃せないのは、「医薬品の添付文書には,肝炎の危険だけがかいてあればよい、その病態や予後の重篤性については特段の事情がない限り情報提供は不要である」とし、さらに「医師が医薬品の是非を検討するにあたり、予期される治療効果と副作用の危険性とを比較考量することは、添付文書に記載するまでもなく、当然のことであるから、特段の事情がない限り、製薬会社はこの点について注意喚起や警告する義務は負わない。」として、医薬品副作用による危険性について、医療現場にその責任を押し付けていることである。
この様な判断がなされたことが、今後医師・薬剤師をはじめとする、医療現場関係者が知ることになれば、大きな怒りを買うことになるのは明らかである(実際すでに怒りと批判の声が上がっている)。
■6 結論
人としての想像力・社会人としての良識を欠き、また法的思考の浅薄を露呈した、お粗末判決で,司法の果たすべき最低限の役割をも果たしていない、不正義判決である。
(薬害肝炎仙台弁護団)