薬害肝炎は、血液製剤によるC型肝炎の感染被害です。肝炎患者の検査・治療・研究体制の充実を目指して活動しています。当ブログでは原告・弁護士たちから情報発信していきます。
by kanen-relay
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
カテゴリ
お知らせなど
このブログは、薬害肝炎東京弁護団の弁護士が管理しています。

● 東京弁護団は、関東甲信越、北海道、静岡の一部を主に担当しています。
 弁護団員には、群馬、神奈川、千葉、静岡、北海道の弁護士もおりますので、弁護団事務局までご相談下さい。

● 2008~09年度に厚生労働省で薬害肝炎に関する検討会・委員会が行われています。

厚生労働省HPの
 「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」
 「フィブリノゲン製剤投与後の418例の肝炎等発症患者の症状等に関する調査検討会」
の部分をご覧下さい。

● 2008(平成20)年1月11日、第168回国会にて薬害肝炎救済法案が成立し、同月15日、薬害肝炎全国原告団は、国と基本合意を結びました。
 また、2009(平成21年)11月30日に、肝炎対策基本法が成立しました。
 これまでのご支援、誠に有難うございました。

 今後は、基本法の趣旨を踏まえ、350万人の肝炎患者のための検査・治療・研究体制がより充実されるよう、活動していきます。

B型肝炎の方へ
 集団予防接種によるB型肝炎感染被害の疑いがある方は、当弁護団ではなく、B型肝炎訴訟弁護団にご相談下さい。
B型肝炎訴訟弁護団
http://www.b-kan-sosho.jp/
全国B型肝炎九州訴訟弁護団
http://www.hbvq.info/

薬害肝炎弁護団リンク
薬害肝炎全国弁護団HP
薬害肝炎九州弁護団HP
九州弁護団事務局長ブログ
薬害肝炎弁護団神奈川支部HP


カテゴリ:薬害肝炎ミニ講座( 10 )
10.国の悪質性~国と製薬企業は一心同体
1 ミドリ十字に対する厚生省の「指導」

 フィブリノゲンによる集団感染(青森県下)が報道されたのは1987年4月のことでした。時はあたかもエイズ騒動まっさかりの頃です。

 まず、厚生省薬務局の安全課と生物製剤課は、ミドリ十字に「フィブリノゲンによる副作用が出ているとの情報があるので、話を聞きたい」と連絡を入れました。監督官庁から呼び出しをうけたミドリ十字は、さっそく社員を厚生省に派遣して説明させています。薬務局内でも「フィブリノゲンの副作用について、どう対処するか」について打ち合わせを行うことになりました。

 翌日4月9日、薬務局は再びミドリ十字に「もう一度、話を聞きたい」と呼び出します。すばやい動きです。
 この場で、薬務局の監視指導課・安全課・生物製剤課から強い指導がありました。指導すること自体はむしろ好ましいことなのでしょうが、驚くべきことは、以下の指導の中味です。薬務局の面々はミドリ十字の社員にこう伝えたのです。

4) (加熱製剤の)承認までに加熱製剤のサンプルを提供するとのことだが、治験の扱いになるので、どのようなサンプルをどのようにして提供するのかを示すこと。
5) AIDS問題等で、血液製剤が、また問題視されようとしている時期でもあり、マスコミの動きには十分注意すること。


d0081819_2219121.gif


 4)は、まだ承認すらされていない加熱製剤なのに、薬務局の判断で、その流通を実質的に認めてしまっています。これでは承認制度の意味がありません。さらに、5)では、マスコミが動き出すことを心配し、ミドリ十字に「注意して動け」と指示しています。

 厚生省が国民のために存在するのであれば、フィブリノゲンによる肝炎感染者をどう救済するのか、これからその感染被害をいかに小さくするか、を真っ先に考えるべきなのに、これらの「指導」は、非加熱製剤が危険だと広く知れ渡ってしまうと大騒ぎになる、その事実は公にせず、内々に処理せよ、それには厚生省も協力する、という姿勢なのです。

2 薬務局会議室で行われた「打ち合わせ」

 さらに、4月30日、薬務局の会議室で、ミドリ十字の社員が薬務局安全課に対して調査内容を報告しました。この場で、こんなことが「打ち合わせ」されています。

・ 報道機関の問い合わせがあった場合、ミドリ十字にて4月30日までの中間報告をまとめて連休明けに厚生省当局に報告することになっていると双方で答えることにする。

・ 理論武装の用意が必要と考える。
 i 血液製剤が使われた場合の患者の不利益についてやむをえないことを述べている文献を用意できないか。
 ii 現在の学問レベルでは、原因究明・予知は無理との文献はないか。
 → 状況証拠から、各々(かくかく)ということになる、だけど、こういうことが血液製剤の特性である、よくするには研究開発しか手がない、ということで肯定していく、すなわち、努力してもここまでが現状ということでいく。


 厚生省の官僚とミドリ十字の社員は、マスコミ対策を打ち合わせ、官僚は理論武装の方法まで伝授しています。

 「理論武装」の中味を良く読んでみてください。「肝炎が多発したことはやむをえなかった」という結論が先にあって、それを何とか理屈で裏付けられないか、と知恵を絞っているのです。官僚が、国民の生命健康より、企業の存続・業界の保護を優先している、その姿勢が端的に表れています。

3 最後に

 国と製薬企業は一心同体。裏を返せば、国民の健康・生命は二の次であることを意味します。厚生省がなぜ製薬企業の利益を守ろうとしたのか、その真実が明らかにされなければならないでしょう。

(東京弁護団・石井麦生)

d0081819_22204040.gif


画像はいずれも、本文引用部分に係るミドリ十字社の社内文書(厚生労働省の公開資料より抜粋)。
[PR]
by kanen-relay | 2007-03-12 20:00 | 薬害肝炎ミニ講座
9.重篤性について~「病像が明らか」でなければならないのか?~
1 なぜ「重篤性」が論点に?

「重篤」とは、病気が重いことです。かつては血清肝炎・輸血後肝炎・非A非B型肝炎と呼ばれていたC型肝炎。古くから、感染すれば、高率に慢性化し、なかなか治らず、時間が経過すると肝硬変・肝細胞がんへと進展すると考えられていました。つまり、死に至る病気、「重篤」と認識されていたのです。

この訴訟で、なぜ「重篤」と言われていたかどうかが論点になるのでしょうか。
それは、薬の有害作用として病気になってしまうとして、その病気が重いものであれば重いものであるほど、その薬の有用性は否定されやすくなるからです。例えば、フィブリノゲンが承認された1964年当時、この製剤によって感染するとわかっていた血清肝炎が重篤なものと認識されていたなら、フィブリノゲンの有用性に重大な疑義があることになります。

2 大阪地方裁判所の判断

 この点、大阪地方裁判所は、
①「1964年当時、血清肝炎になっても、慢性化した後、必ず肝硬変に移行するとは考えられておらず、一般に予後重篤な疾患とは考えられていなかった」
②「1978年当時、非A非B型肝炎になっても、慢性化した後、相当の割合で肝硬変に進展するという知見が確立していたとはいえず、非A非B型肝炎の病像が明らかとなったとまではいえない」
としています。
 つまり、「血清肝炎や非A非B型肝炎に感染しても、慢性化した後のことははっきりとはわかっていなかった」としているわけです。

3 「病像が明らか」でなければならないのか?

 例えば、1980年代に入ると、多くの肝臓専門家たちが「非A非B型肝炎は高率に慢性化する(なかなか治らない)」「慢性化して10年以上の長い年月を経た後、肝硬変・肝がんへと移行していく」と何度も指摘するようになります。このような見解は医学の教科書にも載っています。しかし、大阪地方裁判所の裁判官は、「それだけではだめだ。何年たったら何割の人が肝硬変や肝がんへと移行するのか、はっきりした数字がわからなければだめだ。病像がわかっていないじゃないか」と言ったわけです。

しかし、非A非B型肝炎の「病像が明らか」とならないかぎり、国や製薬企業は「製剤は安全」と考えていてよかったのでしょうか。
① フィブリノゲンを使用されれば、高率に非A非B型肝炎に感染する。
② 非A非B型肝炎に感染すると、高率に慢性化する(なかなか治らない)。
③ 慢性化すると、10年以上という長い年月を経て、肝硬変や肝がんに移行し、死に至る。
という3点がわかっていれば、多くの国民は「そんな製剤は自分に使わないでほしい」と思うはずです。「そんなものは、もはや薬ではない」、そう思うはずです。

4 東京判決に向けて

 私たちは、医学論争をしているわけではありません。C型肝炎のすべてがわかっていなくても、国や製薬企業にはすべきことがある、しかし、何もしてこなかったではないか、そのために多くの被害者を出したのだ、と言っているだけです。

 東京地方裁判所の裁判官には、私たちの真意が必ずや伝わっているであろうと確信しています。事実を直視したすばらしい判決を期待しましょう。

(東京弁護団・石井麦生)
[PR]
by kanen-relay | 2007-03-07 00:00 | 薬害肝炎ミニ講座
8.フィブリノゲン製剤の有効性はない?!
薬害肝炎訴訟で問題となっている製剤の一つに、旧ミドリ十字の製造したフィブリノゲン製剤があります。原告さんの中でも、フィブリノゲン製剤を投与されてC型肝炎ウィルスに感染した方が多数を占めています。

フィブリノゲン製剤は、1964年に製造承認された製剤です。

血液の中には、出血したときに止血するための12種類の血液凝固因子が含まれています。フィブリノゲンは、その12の血液凝固因子の一つで、ほかの血液凝固因子がうまく作用してくれると、最後にフィブリノゲンがフィブリンに変化して、血が固まります。血小板と、12種類の血液凝固因子が複雑に作用し合って、初めて止血に至るのです。

多少不正確ですが、分かりやすく説明すると、12枚のドミノカードがあると想像してください。
最初の1枚が倒れると、バタバタとうまく倒れていけば最後の1枚まで倒れますよね。ですが、途中でドミノカードが紛失していたり、うまく倒れなかったりすると、最後の1枚が倒れることはありません。
止血も同じなのです。フィブリノゲンはドミノカードで言えば最後の1枚なのですが、ほかの血液凝固因子がうまく作用してくれなかったり、足りなかったりすると、フィブリノゲンはフィブリンへと変化することができず、血は固まらないのです。

フィブリノゲン製剤が広く使用されていたのは、産科出血の現場においてでした。
産科で多量の出血があると(中には、ほんのちょっとの出血しかないのに投与された人もいますが)、フィブリノゲン製剤が止血剤として投与されたのです。

ですが、ちょっと考えれば分かりますよね。通常出血すると、フィブリノゲンだけが体外に流出するのではなくて、ほかの血液凝固因子や血小板も同じく体外に流出してしまいます。そこに、フィブリノゲンだけを投与しても、他の血液凝固因子がないのでフィブリノゲンはフィブリンへと変化できません。フィブリノゲン製剤を単独で投与しても、止血効果はないのです。

にもかかわらず、国は1964年にほとんどまともな臨床試験をしないまま、フィブリノゲン製剤の製造販売を承認し、多数のC型肝炎感染者を生み出してしまったのです。

これが薬害といえなければ何なのでしょう。
国には、多数のC型肝炎感染者に対する責任があることは明白だと思います。

(東京弁護団・武田)
[PR]
by kanen-relay | 2007-03-01 00:00 | 薬害肝炎ミニ講座
7.フィブリノゲン製剤の安全対策はどうだったの?
 フィブリノゲン製剤は、5000人分~2万人もの売血者から採取した血漿を混ぜた「プール血漿」を原料として製造されていました。
 プール血漿は、一人分でも肝炎ウイルスに汚染された血漿が混じると、プール全体が肝炎ウイルスに汚染されてしまうため、肝炎感染の危険性が非常に高いものです。
 アメリカでは、1968年に米国医学会専門委員会がプール血漿の使用禁止を勧告しています。

 旧ミドリ十字は、原料プール血漿から肝炎ウイルスを除去したり、感染力を失わせる処理(不活化処理)として、
(1)1964年から1965年11月頃までは「紫外線照射」、
(2)1965年11月頃から1985年8月までは「ベータプロピオラクトン(BPL)と紫外線照射」、
(3)1985年8月から1987年2月までは「抗HBsグロブリンと紫外線照射」、
(4)1987年4月から1994年6月までは「60度96時間の乾燥加熱」
を行ったと主張しています。

 しかし、いずれの処理も効果が不十分で、どの製剤でも単独投与で肝炎感染者が出ています。特に(3)の製剤は、1987年の青森県での妊婦8名の肝炎集団感染の原因となり、(4)の製剤でも肝炎が多発したため、1988年6月に緊急安全性情報が配布されて自主回収となりました。

 大阪地裁判決は、(1)と(3)の製剤は全てに、(4)の製剤はかなり高率に、感染力あるウイルスが混入し、肝炎感染の危険性が高かったと判示しました。(2)の製剤については、当時の感染報告が少数だったことなどから、感染力あるウイルスが混入した製剤と不活化された製剤に分かれていたと判示しました。

 福岡地裁判決は、(2)の製剤についても、BPLの濃度が低く、感染報告が少数というのは調査が不十分だったためで信用できないとして、ウイルス不活化効果があったとは認めがたいと判示しました。

 原料プール血漿に肝炎感染の高度の危険性がある以上、完成した製剤に肝炎感染防止効果があるという科学的根拠がなければ、完成した製剤も肝炎感染の危険性が高いと考えるべきです。
 アメリカのFDAは、そのように安全性を厳格に考えてフィブリノゲン製剤の承認を取り消しました。日本では、国も製薬企業も、感染報告やFDAの承認取り消しなどの情報がありながら、安全性の確認を怠り続け、フィブリノゲン製剤の製造販売を長年継続したため、1980年以降だけでも推計1万人以上という未曾有の肝炎感染被害を生んだのです。

(東京弁護団・伊藤)
[PR]
by kanen-relay | 2007-02-21 00:00 | 薬害肝炎ミニ講座
6.米国FDAの承認取消って何?
アメリカの「血液及び血液製剤の再評価パネル」は、1975年から、フィブリノゲン製剤をはじめとする血液製剤について再評価(*)を始めました。

(*) 「再評価」とは、医薬品が製造承認され販売されるようになった後に、医薬品の有効性・危険性・有用性について、新たな判明した医学・薬学情報も含めて改めて再検討することです。

そして、再評価パネルは、複数回の会議を行い、フィブリノゲン製剤の有効性・危険性について検討した結果、1977年1月に
「肝炎感染の高度な潜在的危険性に加え、フィブリノゲン製剤が必要とされるかもしれないごくまれな場合に対しては、より安全な代替療法、すなわちクリオプレシピテート又は単一供血者由来の血漿が利用可能であることを考慮して」

フィブリノゲン製剤は回収されるべきであると、勧告しました。

この再評価パネルの勧告を受けて、アメリカのFDA(Food and Drug Administration=食品医薬品局)は、1977年12月7日、フィブリノゲン製剤の製造承認を取り消しました。この製造承認取消については、1978年1月6日付Federal Register (米国連邦広報)Vol.43,No4で公表されています。その内容は、以下のとおりです。

「この措置は、フィブリノゲン(ヒト)製剤の有効性に疑問が持たれること及び肝炎感染リスクのより低い他の製剤によって代替し得ることから、製造承認を受けた製造業者らの要請に応じてとられたものである。」

「フィブリノゲン製剤の投与の適応がある患者ではほとんどの場合、多種の異常が存在しているので、フィブリノゲン製剤の単独投与のみでは正常な血液凝固は得られない。このようなことから、フィブリノゲン(ヒト)製剤の臨床効果を評価することは困難であり、その使用が有効とされる適応症はほとんどない。」

「フィブリノゲン(ヒト)製剤は、多数の供血者のプール血漿から製造されている。フィブリノゲン(ヒト)製剤において、B型肝炎ウイルスを不活化させるための加熱処理は、製剤の効力に望ましくない影響を与えるであろう。このような理由から、フィブリノゲン(ヒト)製剤の投与は、単一単位の血漿に由来する製品よりもB型肝炎のリスクが高い。

 主治医によりフィブリノゲンの補充療法が必要であるとみなされるようなごくわずかの臨床例においては、単一単位の血漿から調整したクリオプレシピテート抗血友病因子(ヒト)やその他の製剤をフィブリノゲンの供給源として用いることができる。これにより、肝炎リスクが低下することになる。」


つまり、フィブリノゲン製剤の有効性には疑問があること、肝炎感染の危険性が高いこと、肝炎感染の危険性の低い他の代替製剤があることから、製造承認を取り消しました。

旧ミドリ十字は、1978年1月末には、このFederal Registerの記事を入手しており、社内で回覧していました。

また、国立予防衛生研究所の血液製剤部長であった安田純一(故人)も、1979年出版の「血液製剤」という書籍の中で、アメリカのFDAがフィブリノゲン製剤の製造承認を取り消したことに言及しています。したがって、遅くともこの書籍を執筆する段階では、血液製剤を扱う国の機関も、情報を入手していたことは確実です。

しかし、日本の医薬品行政では、このアメリカの情報は生かされず、フィブリノゲン製剤の有効性・危険性について調査検討されることはありませんでした。

日本でも、中央薬事審議会の再評価特別部会が、1971年12月から1978年10月にかけて、1967年9月以前に承認された医薬品について再評価を行っていました。ことに、1978年6月から7月にかけては、血液製剤の再評価についても審議されていました。フィブリノゲン製剤は、1964年に製造承認された医薬品ですので、本来であれば、この1978年の段階で再評価が行われるはずでした。

しかし、フィブリノゲン製剤については、1978年の段階では再評価されませんでした。その理由は、商品名の変更にありました。ミドリ十字は、1976年4月、フィブリノゲン製剤の商品名を「フィブリノーゲン-ミドリ」から「フィブリノゲン-ミドリ」に変更していました。この商品名の変更により、1964年に承認された医薬品であるのに、1976年に承認されたものとして処理されました。そのため、「1967年9月以前に承認された医薬品」には当たらないということになり、再評価されなかったのです。

つまり、ミドリ十字は、商品名を変更することで、再評価をすり抜け、国もそれを黙認していたということになります。

このような経緯で、日本では、アメリカのFDAの情報は生かされず、フィブリノゲン製剤の再評価が遅れました。実際に、フィブリノゲン製剤の再評価を行うことが決まったのは1984年6月、実質的な審議が始まったのは1985年1月、後天性疾患に対する適応はないという内示が出されたのは、1987年7月でした。


(東京弁護団・まつい)
[PR]
by kanen-relay | 2007-02-17 00:00 | 薬害肝炎ミニ講座
5.第IX因子製剤の有用性とは?
前回の記事では、第IX因子複合体製剤について、有効性・有用性がないということを裏付ける事実をいくつか紹介しました。
今回は、そもそも第IX因子複合体製剤の有用性がどのようにして判断されるべきかということについて説明したいと思います。

1月20日の記事で述べられているように、医薬品の有用性は、有効性と危険性のバランスで決まります。

まず、医薬品の有効性が認められるためには、比較臨床試験を経ていなければなりません。
しかし、第IX因子複合体製剤であるクリスマシンの製造承認申請(1976年)及びPPSB-ニチヤクの製造承認申請(1972年)時には、そもそも被告らの主張する後天性疾患についての臨床試験資料は一切添付されていませんでした。
つまり、資料が揃っておらず、有効性は確認されていなかったのです。
したがって、そもそも第IX因子複合体製剤は、有用性を検討する以前に、有効性の認められないものでした。

また、仮に有効性が認められるものであったとしても、第IX因子複合体製剤は、非常に危険性の高い製剤でした。
第IX因子複合体製剤の原料は、売血者から採血した血漿を集めたプール血漿でした。
当時から、売血による肝炎感染の危険性が高いことや、肝炎に感染すれば慢性肝炎・肝硬変へと進展することは知られていましたし、複数の人の売血をプールすれば、よりいっそうこれらの危険性が高まることも知られていました。

さらに、このように肝炎感染の危険性が非常に高い製剤であったにもかかわらず、旧ミドリ十字(クリスマシン)も日本製薬(PPSB-ニチヤク)も、ウイルス除去や不活化処理を全く行っていませんでした。
他方で、製薬企業が第IX因子複合体製剤による肝炎の発生の危険性について十分認識していたことを示す会議資料等も残っています。
このように、製薬企業は、第IX因子複合体製剤が肝炎の発生の危険性が極めて高い製剤であることを認識しつつ、何らの方策もとらずに放置し続けたのです。

なお、被告らは、医療現場では後天性疾患(乳児ビタミンK欠乏症・新生児出血症・肝疾患に伴う出血傾向等)について、第IX因子複合体製剤の必要性が高かったと主張しています。
そもそも、必要性があるか否かにかかわらず、後天性疾患に対する臨床試験資料が全くない製剤が製造承認・販売されてはならないことは言うまでもありません。
もっとも、被告らの主張する後天性疾患についての必要性もありませんでした。後天性疾患については、ビタミンKや新鮮凍結血漿の投与など、より有用性が高い治療法があったのです。
また、第IX因子複合体製剤の投与により、DICや血栓症を発症する危険性なども指摘されていたのです。

これらの事情を総合すると、有効性が確認されておらず、危険性も非常に高かった第IX因子複合体製剤の有用性は認められないと考えられます。
そして前回も述べたように、FDAや国内の再評価手続でも同じ結論が導かれているのです。

(東京弁護団・後藤)
[PR]
by kanen-relay | 2007-02-13 00:00 | 薬害肝炎ミニ講座
4.第IX因子製剤で重大な出来事は?!
第IX因子複合体製剤については、フィブリノゲンと同様に、有効性・有用性が争われています。
私たちは、後天性疾患(新生児出血症、ビタミンK欠乏症、肝疾患など)に対する第IX因子複合体製剤の有効性・有用性はないという主張をしていますが、1970年代から1980年代にかけて、これを裏付けるような出来事が起こっていました。いくつか紹介したいと思います。

1) 第IX因子複合体製剤による肝炎罹患例の報告の集積

アメリカでは、既に1970年頃から、第IX因子複合体製剤によって血清肝炎に感染したという報告が相次いでいました。
これらの報告の集積を受けて、1973年、国際血栓止血委員会が、ウイーンで「第IX因子濃縮製剤の臨床使用に関する特別委員会」を組織し、1974年には、その勧告の中で、いわゆる「後天性疾患」に対する有用性について、否定的な立場を明らかにしていました。


2) FDA(米国食品医薬品局)による後天性疾患に対する有用性の否定

このように、第IX因子複合体製剤による血清肝炎の危険性が強く指摘されていたので、1976年、FDAの生物製剤局は、血液及び血液製剤再評価委員会(パネル)を設置し、第IX因子複合体製剤の再評価を開始しました。

そして、FDAパネルは、1979年11月15日、FDA長官に宛てて、最終報告書と勧告を提出しました。その内容は、第IX因子複合体製剤には肝炎感染の危険性等があるので、その使用を先天性疾患などの限られた場合に限定すべきであるというものでした。また、製剤のラベルには肝炎と血栓症の危険性を明確に明記すべきことも重ねて勧告しました。
このFDAパネルの最終報告書の結論は、FDAによって受け入れられ、維持されています。


3) 国内における再評価手続における有効性の否定

第IX因子複合体製剤は、日本国内においても、1985年10月1日に再評価指定を受けています。再評価調査会は、1987年9月3日、「凝固因子(第II、VII、X)の欠乏に基づく出血」との効能・効果については、「十分評価できる臨床試験資料の報告は提出されておらず、凝固因子(第II、VII、X)に基づく出血についての有効性を確認することはできない」と結論づけました。つまり、新生児出血症や乳児ビタミンK欠乏症など、第IX因子のみならず第II、VII、X因子も同時に減少するような病態、すなわち後天性疾患については、第IX因子複合体製剤の有効性は認められないとされたのです。


4) 大阪地裁・福岡地裁での評価

上に述べたように、FDAや再評価手続をよく読むと、後天性疾患に対する有効性は否定されているのですが、第IX因子複合体製剤は、もともとは先天性疾患である血友病Bの治療薬として開発されたもので、現在に至るまで製造は取り消されていません(今は肝炎感染の危険性のない安全な製剤です)。
大阪地裁、福岡地裁においては、後天性についても先天性と状況は同じだと判断したのですが、私たちは、明確に有効性が否定されているものだと主張しており、上記の事情はそれを裏付けるものと考えています。

(東京弁護団・後藤)
[PR]
by kanen-relay | 2007-02-09 00:00 | 薬害肝炎ミニ講座
3.薬害肝炎大阪・福岡ではどんな判決が出たの?
薬害肝炎訴訟では、昨年6月に大阪判決、8月に福岡判決が言い渡されています。

2006年6月21日大阪判決
フィブリノゲン製剤は、ミドリ十字については1985年8月以降、国については1987年4月以降の責任が認められました。
1985年8月は、フィブリノゲン製剤の安全対策(製剤に混入している肝炎ウイルスの感染力を失わせる処理)がベータプロピオラクトン処理から抗HBsグロブリン処理に変更になった時期です。1987年4月は、青森県三沢市で肝炎集団感染が発生した時期であり、また、フィブリノゲン製剤の再評価手続において、後天性疾患に対してフィブリノゲン製剤の有効性を示すデータはないとの内示がまさに出されようとしている頃です。

2006年8月30日福岡判決
フィブリノゲン製剤は、国・ミドリ十字とも1980年11月以降の責任が認められました。
もっとも、福岡判決では、米国FDA(食品医薬品局)の承認取消の直後である、1978年1月時点で、国とミドリ十字に有用性の調査・再検討義務を課し、調査・再検討をすれば、有効性が認められたとしても、有用性が認められないとされた蓋然性が高いとの判断を示しており、1980年11月より前の責任を、必ずしも否定した趣旨ではないと考えられます。

第IX因子製剤については、大阪判決・福岡判決とも、心ならずも原告の主張は受け入れられませんでした。2006年8月1日に結審した東京訴訟(本年3月23日判決言渡予定)では、大阪判決の判示を踏まえ、これらの判決の弱点を乗り越えるべく新たな主張も追加し、勝利に向けて闘っています。

(東京弁護団・まつい)
[PR]
by kanen-relay | 2007-01-31 00:00 | 薬害肝炎ミニ講座
2.薬害肝炎訴訟の証人はどういう人?
薬害肝炎訴訟では、原告側7名、被告側9名の証人尋問が行われました。うち2名は製薬会社の社員でしたが、その余の14名は医学・薬学の専門家証人でした。総勢16名の証人尋問は、東京地裁だけで行なったものではありません。全国5地裁で分散して尋問が行なわれました。

では、東京以外の4地裁で行なわれた尋問の内容を、東京地裁の裁判官は、どうやって知ることができたのでしょうか?
それは、証人尋問調書を利用して行われました。証人尋問を行ったときには、裁判所は、証人尋問における質問と回答の発言一語一句を書き起こした「証人尋問調書」という書類を作成します。大阪・福岡・名古屋・仙台で行った証人尋問については、東京地裁に、この証人尋問調書を証拠として提出しました。

証人尋問の様子については、薬害肝炎関連のサイトのリンクを貼りましたのでご覧下さい。
また、取材・研究のために証人尋問調書をご覧になりたい方は、薬害肝炎弁護団事務局までご連絡下さい。

【原告側証人】
・ルウェリス・バーカー(東京)
元米国FDA血液及び血液製剤部長、ウイルス学専門
米国FDAの血液製剤再評価の経緯・医薬品の有用性評価について証言 [1] [2] [3]

・飯野四郎(大阪、東京)   
元聖マリアンナ医科大教授、清川病院院長、肝臓専門
肝炎対策に関する有識者会議メンバー
肝炎の重篤性に関する過去・現在の知見について証言 [1] [2] [3]

・大林明(東京)
元国立療養所東京病院、肝臓専門
厚生省特定疾患難治性の肝炎調査研究班メンバー
肝炎の重篤性に関する過去の知見について証言 [1] [2]

・大内清昭(仙台)
元東北大学医学部附属病院、肝臓専門
肝臓専門医院経営
肝炎の重篤性に関する現在の知見について証言 [1]

・衣笠恵士(福岡)
元都立墨東病院院長、血液学専門
フィブリノゲン製剤再評価委員
フィブリノゲン製剤再評価の経緯・医薬品の有用性評価について証言[1] [2]

・椿広計(福岡)
筑波大学教授、統計学・医薬品評価専門
医薬品の有用性評価について証言 [1]

・飯塚敦夫(名古屋)
元神奈川県立こども医療センター、小児血液学専門
小児科医院経営
第IX因子製剤の有用性について証言 [1] [2]   

【被告側証人】
・矢野右人(福岡)
元国立病院長崎医療センター長、肝臓専門
肝炎の重篤性に関する過去の知見について証言 [1] [2] [3]

・真木正博(東京)
元秋田大学教授、産婦人科専門
フィブリノゲン製剤の治験担当者
フィブリノゲン製剤の有用性について証言 [1]

・寺尾俊彦(福岡)
浜松医大学長、産婦人科専門
フィブリノゲン製剤の有用性について証言 [1] [2] [3]

・小林隆夫(大阪)
元浜松医大助教授、信州大学教授、産婦人科専門
フィブリノゲン製剤の有用性について証言 [1] [2] [3]

・清水直容(福岡)
元帝京大学教授、医薬品評価専門
医薬品評価について証言 [1] [2]

・有本亨(大阪)
元厚生省薬務局職員
当時の厚生省の医薬品評価について証言 [1] [2]

・藤村吉博(東京)
奈良医大教授、血液学専門
第IX因子製剤の有用性について証言 [1] [2]

・柚木幹弘(東京)
三菱ウェルファーマ社員

・稲田俊(東京)
日本製薬社員
[PR]
by kanen-relay | 2007-01-27 00:00 | 薬害肝炎ミニ講座
1.薬害肝炎訴訟の3大論点
東京判決を3月23日に控え、これから何回かに分けて、これまでの薬害肝炎訴訟の復習をしていきます。

薬害肝炎訴訟で問題となっている法律的な争点は、次のとおりです。
1.製剤の安全対策
2.血清肝炎・非A非B型肝炎・C型肝炎の重篤(じゅうとく)性
3.製剤の有効性
4.因果関係
5.損害
6.除斥期間
7.国の違法性

1~3の安全対策・重篤性・有効性は、いずれも医薬品の「有用性」に関する争点です。薬害肝炎訴訟でもっとも重要な争点は1~3、つまり、医薬品の有用性です。

国は、医薬品として申請されたモノに、有効性が認められないとき、または、有効性に比して「著しく有害な作用」があり医薬品として「使用価値がない」と認められるときは、医薬品として承認してはなりません(薬事法14条2項参照)。

「著しく有害な作用」とは、要するに著しい副作用のことで、これを「危険性」といいます。医薬品として「使用価値がない」ことを「有用性がない」といいます。つまり、医薬品の有用性は、有効性と危険性のバランスで決まります。有効性>危険性のときには、有用性あり、有効性<危険性のときには、有用性なし、ということになります。有用性がないときには、医薬品として承認すべきではありません。有効性と危険性は、有用性の構成要素ということになります。

ところで、薬害肝炎で問題となっている医薬品(=血液製剤)の危険性の有無・程度は、製剤の安全対策と肝炎の重篤性(=肝炎の病態の重さ)の2つの要素から決まります。

血液製剤は、多数の売血者から採血した血漿(けっしょう)を集めたプール血漿を原材料として作られるものです。そのため、原材料に肝炎ウイルスが混入するリスクを避けることができません。そのため、肝炎ウイルスを取り除いたり、感染力を失わせたりする安全対策が十分であったかどうかが危険性の有無・程度を左右するのです。

肝炎の病態の重さがどの程度かということも、危険性の程度を左右します。仮に、肝炎ウイルスに感染しても、一過性の風邪のようなもので完全に治癒する病気だとすれば、危険性の程度はわずかといえるでしょう。しかし、肝炎ウイルスに感染すると、肝硬変や肝がんになってしまうとすれば、危険性の程度は相当重いということになります。

このように、安全対策の有無・程度×重篤性の程度=危険性の有無・程度になるのです。

薬害事件では、その当時の医学・薬学的知見(知識・学問レベル)に基づいて医薬品に有用性が認められたかどうかにより、国や製薬会社の法的責任の有無が判断されます。そこで、薬害肝炎でも、有用性の構成要素である有効性、危険性(=安全対策、肝炎の重篤性)が大きな論点となっているのです。

(東京弁護団・まつい)
[PR]
by kanen-relay | 2007-01-20 11:00 | 薬害肝炎ミニ講座